NYの巨大な空き地の底から

NYにいたある日。ふとWTC跡地にイッてみよーと思い、地下鉄に乗った。駅を出てスグ、その場所はある。初めてNYにイッた時、マンハッタンのミッドタウンからダウンタウンまで散歩した。その時、WTCにも寄ったケド、展望台には登らなかった。歩きながら街を見物する方が楽しかったのだ。展望台に登れば良かったかナァ。そンなコトを思い出しながら「巨大な空き地」に変わってしまったその場所を眺めていた。ココで何人死ンだンだろー。そう思った瞬間だった。
ナニか巨大な塊が、その空き地の真ん中から迫って来た。モノ凄いスピードで。捕らえられる!そー感じて、慌ててその底から意識を逸らし、その場から一時退避した。空き地の近所にあるマクドナルドで軽く休んでいる間、NYに着いたその夜に感じた「視線」を思い出していた。ナニかは判らないナニモノかの「視線」だ。その「視線」を感じる先には、あの911の犠牲者の写真を掲示してあるフェンスがあった。オレにはどーするコトも出来ンっつーのに。
再度その空き地をじっくり見よーと、マクドナルドを出た。しかし、最初は空き地の周りを歩いてみよーと思ってたのに、怖くて出来ナイ。アノ、熱い塊のコトを思い出してしまうからだ。結局、記念に写真を撮って来ただけ。一体ナニをオレは確認したかったンだろー。
その数日後、沖縄出身のミュージシャンが、その空き地でライブ出演した。ライブのほぼ直後、彼と話す機会があった。「どうでした?」と、オレが訊くと、彼は黙ってしまった。彼の妻が答える。「この人、何か感じる人だから。」
暫くして、彼は「重くてね。」とポツリと言った。「熱いんだ、何かこう…ズシッと。」「やっぱりそうですか。」とオレ。「だから、負けないように頑張ったよ。」と言う彼は、まだその感じが抜けナイよーだった。オレがそーゆー立場だったら、負けてたと思う。多分飲み込まれてる。それと対峙する覚悟がなければ、あの空き地にオレは近づけナイかも知れン。そンなコトを思ってた。