「大漁!まちこ船」が面白い

三宅乱丈週刊モーニングでの新連載「大漁!まちこ船」は問題作だ。実質的なデビュー作「ぶっせん」とゆー、お寺を舞台にしたギャグ漫画から一貫して「自己同一性を保持可能にするモノはナニか」とゆーテーマを描いている作家だとオレは思ってるケド、今回のこの連載は、所謂ジェンダーの社会性をそのテーマに絡めてる感じ。この作品の前に週刊ビッグコミック・スピリッツで連載されてた「ペット」は、ヒトの精神に入り込み、それを「操作」デキる登場人物達の、精神内世界での攻防を描いた、シリアスなマンガだった。コレは自己同一性の成立する場所を、そのヒトの精神内部そのものを中心に描いてたと思うケド、「ぶっせん」がそーであったよーに、「大漁!まちこ船」は、登場人物達の置かれている状況に、その中心を設定してるよーな感じだ。そしてその状況はかなり「シュール」だ。
主人公のまちこは「少女」の形をした「マグロのエサ」として描かれる。彼女の「飼い主」はマグロ漁船のオーナーの、マッチョな毛深い男性である。彼女は彼に池須で飼われており、彼女は何と、そこで「産卵」しちゃったりする。その「卵」に、目下の飼い主である彼に「かけられ」たくなくて、彼女に「ある勘違い」をして思いを寄せるサラリーマン風の男性に「かけられ」たいと、まちこは自分でも理由は判らナイケド思ったりする。このまちこって一体、ナニ?日々「マグロのエサ」としてマグロに丸飲みさせられ続けるまちこ。ン〜…。
今週のまちこは、釣り糸が絡まって海底で身動きが取れず、タコの家族(父・母・息子)に岩陰に引きずり込まれる。あわやタコ家族の餌食に、とゆー局面で、太め体型に描かれた父タコの「旨くなるまで待つ」とゆーのに空腹極限状態の母タコがキレて「そンなら、オマエを喰ってやる。オマエばかり丸々太りやがって〜!」と息子タコと一緒に父タコを喰うとゆー状態に。あー…コワいヨ、この連載。
最早連発される「シュール」な状況がスゴ過ぎて、笑えナイ。一応、ギャグマンガの体裁を取ってるンだケド、毎回こーゆー調子ぢゃ笑うどころか、逆に冷静になっちゃって、一体コレが示す「意味」はナニって思っちゃう。「怨念」がそこかしこにっつーか…。
ちなみに、三宅乱丈は女性作家だ。「ぶっせん」を読んでた時はてっきり男性作家かと思ってたケド、途中で女性作家と判明してビックリした。その後、彼女の「王様ランチ」とゆー作品を読んで、確かにコレは女性の視点かもしれナイと思った。「大漁!まちこ船」は、女性作家ならではの作品って感じが強いナ。このマンガが一体どーゆー着地点を目指してるのか、久々に気になる作品だ。